2009年04月18日

ダイアログ・イン・ザ・ダーク

ダイアログ・イン・ザ・ダークというイベントに行ってきました。

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目以外のなにかで、ものを見たことがありますか?

 暗闇の中の対話。
 鳥のさえずり、遠くのせせらぎ、土の匂い、森の体温。水の質感。
 足元の葉と葉のこすれる枯れた音、その葉を踏みつぶす感触。
 仲間の声、乾杯のグラスの音。
 暗闇のあたたかさ。

ダイアログ・イン・ザ・ダークは、まっくらやみのエンターテイメントです。
(ダイアログ・イン・ザ・ダーク公式HPより)
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「漆黒の闇」という言葉がありますね。
ある日突然そんな場所へと迷い込んだとしたら、一体どうなるでしょうか?
光が全く感じられない暗闇の中で
私は何を感じ、何を確かめることができるでしょうか?

ダイアログ・イン・ザ・ダークは
1989年にドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケの発案によって生まれ
世界25か国・約100都市で開催されました。
2009年現在で600万人以上が体験したそうです。
日本では1999年以降、ボランティアの手によって毎年開催され
約3万6千人が体験しているそうです。

このイベントは、「まっくらやみの世界」に何人かのグループで入り
あちこちを探検し、そこでいろいろな体験をします。
暗闇のエキスパートであるアテンド(視覚障害者)が
参加者をサポートしてくれます。

本当に真っ暗なんですよ。いつまで経っても自分の手さえ見えない世界。
こんなに真っ暗な場所は、少なくとも日本では存在しないと思います。
私が参加した回は、8人の参加者たちとグループを作りました。
頼りは最初に手渡された白杖とアテンドのサポートのみです。

最初はものすごく怖かったです。足を半歩も踏み出せません。
まずは匂いがしました。木のにおい。足元は芝生か枯れ草で柔らかいです。
どこかで鳥の鳴き声や川の水音がするけれど
それに耳を傾ける心の余裕がありません。

そのうちに地面が、石ころのある道に変わってきました。
ちょっと大きめの石に靴が触れるだけで、ものすごくビックリします。
思わず「わっ、怖い!」と小さく叫ぶと
「まやさん、大丈夫ですか。こっちですよ」という
アテンドの声が近づいてきました。その声がどんなに心強かったか。

参加者全員で手を取り合い、声を掛け合って
少しずつ手探りで進んでいきます。
右側に大きな木がありました。竹もありました。
左側の足元には水が流れていました。小川のようです。

「この先は丸太橋がありますよ。渡りましょう」
「ええーっ!」
参加者ひとりずつが後ろの人の手を取って丸太橋の位置を教えて
勇気を出して橋を渡ります。結構これが長かった。こわかった。

「次はぼくのおじいちゃん家があります。遊びに行きましょう」

おじいちゃん家は縁側があって、畳が敷いてありました。
靴を脱いで上がると、ちゃぶ台みたいなテーブルがあって
いろいろな野菜や果物などが置いてありました。
大根、キャベツ、リンゴ、茶筒、鉛筆・・。
このあたりからだんだん楽しくなってきます。

そんな感じで「まっくらやみの世界」を1時間30分探検しました。
最初は本当に怖くて仕方がなかったのに
最後には「えっ、もう帰るの?」と思ったくらい楽しかったです。

視覚が閉ざされた暗闇の世界では
残された四感(嗅覚・触覚・聴覚・味覚)が開かれ、とぎすまされます。
自分の四感や感情がどのように反応するのかがとても興味深かったです。

何か音がすると、反射的に音色・方向・高さ・距離を図ろうとします。
そして、無意識に頭の中で今いる世界の様子を思い描いています。
自分が脱いだ靴は手に取った瞬間に「これは自分の靴だ」と分かります。
「ここに花が咲いているよ」「ここに自転車がある」と
どこかで誰かの声がするだけでとても安心します。
自分の声を誰かが受け止めてくれると、さらに安心します。
そして
ついさっき初めて会ったばかりの見ず知らずの人に
「ここにブランコがありますよ」と手を取って教えている自分がいます。

とても感動的で、いつまでも心に残るイベントでした。
単なる「まっくらやみの世界探検」以上のことに気づかされました。

まずは
「人は誰かを信じ、愛するように生まれついた存在なんだな」と思いました。
あの真っ暗闇の世界に放り込まれると
見ず知らずの人の声の音色に温かさを感じ取るのです。本能的に。
気がついたときには、知らない人に声をかけて手を差し伸べています。
この暗闇に万が一、良からぬ人が紛れ込んでいたとしたら危険だ
という発想はみじんも頭に浮かびませんでした。

「暗闇では、最初からあんなに他者を信じて心を開くことができるのに
なぜいつもはそうじゃないんだろう。」
「何が私を閉ざしているんだろう」と帰り道でものすごく考えました。

また
自分自身も含めて、あの世界にいるもの全てが
暗闇の中に溶け込んでいるような感覚がものすごく印象的でした。
自分も、誰かも、全てのものの境界線が暗闇で消されているような雰囲気。
あの時の暗闇は温かいもので満ちていました。
あの「心地よさ」はいったい何だったんだろうと、今も考えています。

いろいろと考え込みながら帰路につきました。
地下の駅構内で
ふと線路の先を見ると、そこには暗闇が広がっています。
「あぁ、自分の中で暗闇のイメージが変わっている」とその時思いました。

あまりに感動したので、とても長い記事になりました。
「暗闇はこわいものだ」と思っているあらゆる方に
ぜひおすすめしたいイベントです。
私ももう一度行ってみたいと思っています。

【開催情報】

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク TOKYO」(公式HPはこちら

会期:第1期 2009年3月20日(金)〜6月下旬 
   ※各火曜日はメンテナンスのために休館
   第2期 7月上旬〜 (予定 ※長期開催を目指しています)
定員:各8名 (所要時間約90分)
会場:レーサムビルB1F 東京都渋谷区神宮前2-8-2 (→地図)
   ※東京メトロ銀座線・外苑前駅下車 徒歩8分
参加費:定価8000円(完全予約制、日時によって割引あり)
主催:特定非営利活動法人 ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン
posted by 加藤まや at 13:52 | TrackBack(0) | 日記 | 更新情報をチェックする

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